ステージⅣだよ 全員集合!

50代。乳がんステージⅣで知ったこと&考えたこと

がん発見!より再発が大変なのは…

がん、こと悪性腫瘍を、広辞苑はこう定義しています。

「増殖が非可逆的かつ速やかで、周囲組織への浸潤や遠隔部への転移により

病巣を拡大し、生体の消耗を来(きた)す腫瘍」。

これをワタクシ的に翻訳すれば

「勝手に増えて本体にダメージを与える細胞たち」とでも言いましょうか。

 

そのダメージが肝臓や肺、脳など生命維持にかかわる臓器を停止させたり、

基本的なエネルギー代謝を停止させる、それがすなわち「がん死」である、と。

 

なんか、そんな基本的なことすら私は再発後に知りました。遅いって。

でも初発(「がんが見つかりました!」の段階)では

「わー! きゃー! 取って取ってーっ!!」って

「髪に虫ついてるよ」と言われたのと同じ反応に終始する人は多いんじゃないかな

(そしてその後は医師の言うままに補助治療をし、サプリを飲み、と

現実的な再発防止にまい進する……あたしだよ)。

 

「がんの理屈」を知るうえで、私にとって最も参考になったのは

『がんを告知されたら読む本』(谷川啓司・著/プレジデント社)でした

(最も、と威張るほど他の本も読んでないですけれども)。

 

いわく、

「がん細胞それ自体に痛みや苦痛を引き起こす力はありません」

「痛みや症状などの不調が出る場合は(中略)、

がん細胞の塊が症状を起こす場所にできたのが理由」

「死に至る理由を満たすことがあるのは、肺や脳といった主要な臓器に

転移したときです。そこに転移したがん細胞がどんどん増えることで、

生きるために絶対に必要な臓器の機能が低下し、生命を維持できなくなる

場合があります」……。

 

なんだ!

 

そんなことか!

 

と思いましたね。なんて簡単な理屈なんだと。

 

だから、がんになったからと言ってやみくもに絶望することはない、

その「症状」と丹念に戦って、寿命に近づく努力をすればいいのだ、と

『告知されたら』本は説くのですが(そして説得力も満点なのですが)

私自身は本書の読後、

「だから再発のほうが恐ろしい」理由のほうに、妙に納得がいきました。

 

つまり、初発時にがん細胞を除ききることができず、

「勝手な(迅速で、遠隔への)増殖」を許してしまった結果が再発なのだ、と

(ちなみにここで「転移」より「再発」といっているのは、患者である

ワタクシ自身の感覚に近いから。間違っていたらスミマセンです)。

 

山小屋のボヤを見つけて、消したと思ったら数日後に

山の別の箇所が火を噴いた、という感じでしょうか。それも複数。

火の粉は地を這い風に乗って、

深く乾燥した山肌のどこに潜っているかわからない……

プロの山火事消防士(いるのか? アメリカにはいそう……)なら

「あかーん」と判断する事態ですね。

私の場合はもとの胸あたりと骨、肺への再発・転移でしたが、

医師が「ステージⅣです……残念ながら」と沈痛な顔で言ったのもむべなるかな。

ポイントは「勝手な増殖」にあったわけです。

そんなことすら、知らなかったよー。

「再発」とは取り切れなかったがん細胞が、

なんなら全身に到達したと考えるべき段階である、と。

もう手術とかで部分的に「削除」はできない。増えてくよー、ってことですね。

 

ちなみに。

わざわざ拙文を読んでくださっている方はご存じかもですが、

ステージⅣとは「骨、肺、肝臓、脳などの臓器に転移している段階」

だそうで(出典『乳がんと生きる』毎日新聞出版)、

がんの平均余命などでも最後に紹介されるステージなので

イコール「末期がん」と思われがちな段階です。

 

もちろん宣告された当時は私もショックでしたが、

どうもステージⅣの世界も奥が深いらしく……。

この話はまた別の折に。